アニサキスとは
アニサキスは線虫の一種で回虫目に属する寄生虫です。サバ、イワシといった海洋魚介類がアニサキスに寄生されたオキアミを捕食し、それをさらに人が食べることで感染します。
アニサキスに寄生されたサバやイワシなどを新鮮なうちに生食、または加熱不足の状態で人間が食べると、激しい胃痛や悪心（吐き気）、嘔吐などの症状をおこします。アニサキスは人の体内では約１週間ほどしか生きられないため、無症状で済む場合もあります。
内視鏡によるアニサキスの除去や、薬によって症状を抑えることができますので、魚介類を食べた後に腹痛、吐き気、発熱などの症状が出た方は、お早めにご相談ください。
アニサキスの症状
胃アニサキス症
アニサキスが胃壁に潜り込もうとして胃壁につきささることで症状が起こります。アニサキスが入った魚介類を食べて３～４時間程度で、上腹部痛に加えて、悪心（吐き気）・嘔吐などの症状が起こります。これらの症状はアニサキスが刺さった痛みではなく、アレルギー反応によるものであるため、中には症状が全くない方もおられます。
内視鏡についている鉗子で摘除することですぐに症状は治まります。
当院では、胃アニサキス症の場合、緊急胃カメラ対応を行います。まずはお電話にてアニサキス症の疑いがあることをお知らせください。その際は食事をとらずにご来院いただく必要があります。
腸アニサキス症
アニサキス症はほとんどが胃で起こります。しかし稀にアニサキスが腸まで到達し、そこで腸壁に潜り込もうとする場合、腸アニサキス症となります。アニサキスの含まれた魚介類を生食、または加熱不足で食べた半日から数日後に強い下腹部痛とともに、悪心・嘔吐、発熱などの症状が起こります。
非常にまれですが、症状が悪化し腸閉塞や腸穿孔などを起こすこともあります。その場合、入院が必要になるため、連携する高度医療機関をご紹介いたします。
消化器外アニサキス症
非常に稀な症例ですが、胃壁や腸壁に潜り込んだアニサキスが消化管を突き抜けて腹腔へ飛び出してしまった状態です。症状はアニサキスの移動した部位により異なり、それぞれに応じた治療を行います。
アニサキスアレルギー
アニサキスにアレルギーのある方の場合、アニサキスが死んだ状態の魚介類を食べてもアレルギー症状を起こします。
症状は蕁麻疹などですむ場合もありますが、重症になると、血圧低下、呼吸困難、意識の消失などを起こす場合もあり、注意が必要です。
アニサキスとアナフィラキシー
アレルギーのなかでも重篤なのがアナフィラキシーショックで、呼吸困難、血圧低下、意識障害などが起こり、命に危険のある状態です。
アニサキスはアナフィラキシーショックを引き起こす原因として、国内で３位になっています。
これまでサバやアジなど青魚アレルギーと思われていた方が、アニサキスアレルギーであったということもあります。
青魚アレルギーがある場合、アニサキスアレルギーではないか調べることをおすすめします。
アニサキスが見つかりやすい魚
基本的にはあらゆる魚に寄生する可能性があります。あくまで傾向としてですが、下記の魚から発見されることが多いです。当院ではサバが最も多いです。
- サバ（特にシメサバ）
- イカ
- サンマ
- サケ
- イワシ
- タラ
アニサキスの予防
アニサキスは宿主が生きている間は内臓に、死ぬとすぐに筋肉の中に移動します。そのため、新鮮な魚はすぐに捌いて内臓を取りだしてください。
基本的には、アニサキスは60℃以上の熱で1分以上加熱、または－20℃以下の環境で24時間以上冷凍することでも死滅します。
そのため、十分加熱して食べるか、またはどうしても刺身で食べたい場合は、いったん冷凍してから食べることをお勧めします。
またアニサキスは長さ1.5ｃｍ以上の細い糸状の身体をしていますので、肉眼でもはっきりと見分けることができます。調理する際にしっかりと確認するようにして、見つけたらピンセットなどで取り除くようにしましょう。
アニサキスの検査と治療
検査
問診で胃アニサキス症が疑われる場合、胃カメラを行います。
胃を超えて小腸などで症状を起こしている場合は、内視鏡検査ができませんので、X線検査や腹部超音波検査、血液検査などを行います。ただしこの場合はっきりと寄生場所を確認することは難しいです。
治療
胃カメラの際に、スコープの先についている鉗子によってアニサキスを摘除します。胃壁からアニサキスが離れると、短時間で症状は治まります。胃粘膜の炎症が強い場合は胃の粘膜保護剤などを処方することもあります。
内視鏡を使えない場所の場合は、薬で症状を抑えながら、アニサキスが死滅するのを待つことになります。
アニサキスを駆除できる薬は今のところございません。
