性感染症とは
性行為(オーラルセックスを含む)などを介して病気に感染する性感染症は、自覚症状があるものと無いものがあり、自身が感染している事に気づかずに多くの人にうつしてしまっているケースがあります。性感染症は、細菌性、ウィルス性、原虫など多種多様な微生物からくる病気です。病気の正しい知識を持つことが大切です。疑わしい症状が少しでもある方は、お気軽に当院へご相談下さい。
性感染症の予防
性感染症の予防にはコンドームの着用が有効です。また、出血を伴うような性行為を避けることで性感染症のリスクは大幅に軽減されます。万が一、感染が分かった場合には早期に適切な治療を行うことが大切です。ご自身だけでなく、パートナーの方もご一緒に診察と治療を行いましょう。
セルフチェック
以下の項目に当てはまる方は、産婦人科もしくは泌尿器科を受診しましょう。
問診で症状をお伺いし、尿検査や血液検査、膣分泌検査などで原因を特定します。
- おりものが急に増えた
- おりものの色が変わった
- おりものの臭いがきつい
- 外陰部にかゆみや痛みがある
- 外陰部にいぼや水泡がある
- 下腹部に痛みがある、発熱がある
- 性交や排尿の際に痛みを伴う
- 性交が終わると性器から出血している
性感染症の主な疾患
性器クラミジア
クラミジアによる感染は自覚症状が乏しく、気付かずに人に感染させてしまっているケースがほとんどです。日本ではクラミジアによる感染は感染症の中でも感染者数が最も多い
病気です。感染してから発症するまでは1~4週間程度です。
男性の症状
- 陰部にかゆみや不快感、少量の分泌物がある
- 排尿時に軽い痛みを感じる
- 性交中に軽い痛みを感じる
放置したままだと、精巣上体炎や男性不妊症のリスクが高まります。粘膜が炎症を起こしているのでHIVをはじめ他の性感染症の感染リスクも高まります。
女性の症状
- おりものの量が少し増えた
- 外陰部がかゆい、腫れている
- 排尿時に軽い痛みを感じる
- 性交中に軽い痛みを感じる
放置したままだと卵管炎や腹膜炎、子宮内膜症、子宮外妊娠、不妊症になることがあります。
粘膜が炎症を起こしているのでHIVをはじめ他の性感染症の感染リスクも高まります。
淋菌感染症
淋菌を原因とした感染症です。性行為以外での感染は、ほぼありません。クラミジアに次いで感染者数が多く性器や咽頭、眼球と感染の部位を増やしたり、治療薬に抗体を持つ菌に変化するなどして感染を拡大させています。感染から症状が出るまでの期間は2~7日程度です。
男性の症状
- 性器から黄白色の膿が多量に出る
- 尿道にかゆみがある、熱っぽい
- 排尿時に激しい痛みがある
- 性器が腫れる、痛い
放置していると尿道が狭くなる尿道狭窄症や精巣上体炎、男性不妊などを発症する恐れがあります。人によっては歩行が困難になるほど痛みが激しくなることもあります。
女性の症状
- おりものの量が増える
- 黄緑色のおりものが出た
- 外陰部がかゆい、腫れている
- 不正出血がある
- 頻尿や排尿痛がある
女性の場合は、無症状の方が多く感染に気付かないことがほとんどです。けれど放置したままにすると卵管炎や腹膜炎、子宮内膜症、子宮外妊娠、不妊症になることがあります。感染に気付かずに人にうつしていることもあるため注意が必要です。
トリコモナス
トリコモナスは性行為以外に下着やタオル、トイレや浴槽など感染ルートは様々です。性器からの強い悪臭が特徴で、感染してからは10日ほどで症状が現れます。
男性の症状
- 性器から少量の分泌液がでている
- 排尿時に軽い痛みを感じる
- 頻尿
男性の場合は、尿道感染のみであれば排尿時に洗い流されることもあり、症状も軽度です。けれど感染を放置したままにすると悪化して尿道炎や前立腺炎を発症するリスクが高まります。
女性の症状
- 魚が腐ったような強烈なにおいのおりもの
- 泡状のおりものが出る
- 黄緑色のおりものが出る
- おりものが大量に出る
- 排尿時に軽い痛みを感じる
- 性交時に軽い痛みを感じる
女性は男性に比べて症状が強く出ます。
B型肝炎
B型肝炎ウィルスにより肝機能障害がおこる性感染症で、ウィルスが持続的に感染していると慢性化し慢性肝炎となります。B型肝炎は肝がんの発症リスクを高めます。
慢性肝炎は潜伏期間が6か月以上です。倦怠感や食欲不振、吐き気、濃い色の排尿といった症状が出ます。全身に黄疸が出ると入院による治療が必要になります。まれに劇症肝炎を引き起こすと死に至ることがあります。
感染のルート
出血を伴う性行為やタトゥーの針の使いまわし、注射の使いまわしで感染が広がります。
感染部位は粘膜をはじめ、傷口や血液、体液を介し感染します。
一過性感染と持続感染
B型肝炎ウィルスはHIVやC型肝炎ウィルスよりも感染力が非常に高く、性行為外に輸血など血液や体液を介して感染します。あなるセックスなどの出血を伴う性行為は感染リスクをより高めます。B型肝炎は、無症状で体内の免疫力でウィルスを排除する一過性感染と、排除できずに体内にウィルスが残ったままの持続感染があります。成人の場合は、免疫機能で体内からウィルスを排除し一過性感染で済む場合がほとんどです。免疫力が低下している場合は、体内にウィルスが残存し、慢性肝炎を発症してしまいます。慢性肝炎は、肝臓に炎症がおきた状態が6か月以上継続した状態です。放置したままだと肝硬変や肝がんを発症するリスクが高まります。
その他の性感染症
尖圭コンジローマ
ヒト・パピローマ・ウィルス(HPV)は、性行為の経験がある女性なら一生に一度は感染するといわれるウィルスです。100種類以上あるといわれるウィルスの中でもHPV6型、11型の2種類が尖圭コンジローマを発症します。感染してもほとんどの方が免疫力によりウィルスを排除できますが、排除できずに尖圭コンジローマを発症すると再発を繰り返してしまいます。感染してから症状が出るまでに3週間から8か月かかります。かゆみなどの自覚症状はないのですが、見た目にカリフラワー状、鶏冠(とさか)状のいぼが陰部に現れます。いぼの大きさや部位によっては痛みやかゆみを伴う場合があります。
性器カンジダ症
カンジダはカビ(真菌)の一種で、体調の変化や膣の環境のバランスが崩れることで、性器カンジダ症を発症します。おりものの量が増え、ヨーグルトやチーズ状の白いかすのようなおりものが出てきます。臭いもきつくて外陰部や膣が腫れてかゆみが出ます。男性もかゆみやただれの症状がでて、亀頭が赤く腫れて白いカスが出てきます。女性に比べて男性は症状が軽いので気付かないことがあります。
性器ヘルペス
性器ヘルペスは、粘膜や皮膚にできた小さな傷から単純ヘルペスウィルスが感染し発症します。特に女性は、性行為の時に摩擦によって膣内の粘膜に傷ができやすいため、男性と比べると感染リスクが高いです。感染してから症状がでるまでは、2日~10日程で初めて感染したときは痛みの症状が強く出ることがあります。感染部位は性器や肛門の他、キスやオーラルセックスを介して口や唇の周りにも発症します。